『大奥』を読んでみた

こんにちは、はるばぁです。
漫画が好きで、気がつけば電子書籍の冊数が四桁を超えていて驚きました。
せっかくなので良かったもの、もそうでもなかったものも(笑)ご紹介していければと思います。

大奥

漫 画:よしながふみ
発 行:㈱白泉社
発刊数:1~19(完)

はるばぁの評価

人物作画 :★★★☆☆
背景作画 :★★★☆☆
ストーリー:★★★★☆
おすすめ度:★★★★☆

作品導入部

山間の村の定吉という子供がキノコを採りに山奥に入り、熊に襲われる。虫の息で発見され親元に連れ帰られたが息を引き取った。その後村に異変が起こる。
まず定吉の一番上の兄乙吉が原因不明の高熱と全身に広がった真っ赤な発疹が膨れ上がり、四日後に死亡。次いで二番目の兄又吉も同じ症状で死亡。その六日後には父の乙松も発病。
乙松は一命をとりとめたが、同じ頃発病した乙吉の幼馴染の長兵衛は死亡。
定吉の母と妹は病にかかることなく無事だった。
おそらく定吉は山の神から恐ろしい疫病をもらってきたと、母は気づいていた。

その疫病はたちまち隣の村、そしてまたその隣の村へと伝染する。
男だけがかかり、しかも若い男がこの病にかかると十人中八人が死んだ。
最初は気味の悪い風土病と思われていた疫病は、数年の後には関東一円から更に西へと広がり、恐ろしい勢いで男子の人口が減少していく。
天然痘に似た症状のため赤面疱瘡と呼ばれた病は、根本的な治療法が見つからないまま、しかしごく一般的な病としてこの国に根付いてしまう。

そうして八十年近くの歳月が流れたころ、男子の人口は女子のおよそ四分の一で安定し、男子のあまりの生存率の低さ故に男の子は子種を持つ宝として大切に育てられ、女が全ての労働力の担い手にならざるを得なくなり、あらゆる家業が女から女へと受け継がれることとなる。
婚姻制度は崩壊し、貧しい女たちに夫を持つことは到底無理。彼女たちは花街で男を買い、種をつけてもらって子供を産む。
婿を取ることは武士階級や富裕な商人庄屋などにのみ許された特権になってゆく。
将軍職もまた、三代家光以降女子の継ぐところとなる。
唯一の天下人である公方様にのみ許される最高の贅沢、それは男子の少ないこの世で、美男三千人を集めたと言われる女人禁制の男の城『大奥』である。

感想

時代物。男女逆転大奥もの。
人物画・背景画共にいい意味で若干の癖があるかな。
好き嫌いは分かれそうだが、絵的にどうしても苦手というのでなければ是非読んでみて欲しい作品。

徳川の世を守るため、徳川の血を絶やさぬためと作られた大奥。この存在を知らない人は少ないんじゃないかな。
どんな美女も選び放題。婚約者がいようが夫がいようが、将軍の気分次第でどの女性でもお手付きに出来てしまう。これぞ男のロマンだハーレムだと思った男性もいるかもしれない。

けれどこの作品は言わば逆ハーレム。ここで史実とどうすり合わせるかが最大の難所だと思う。
物語は八代将軍吉宗から始まるが、三代将軍家光から最後の将軍十五代慶喜までの物語が描かれている。

徳川の血を絶やさないということは、男性ならばたくさんの女性に子を産ませればいいのだが、女性の場合自分が子を産まなければならないということになる。
歴史に詳しい人や大奥についてある程度知っている人はピンと来るかもしれないが、将軍が自分で生んでいたという設定ではどうしようもない時代があり、そこをご都合主義的な史実変更をせずにどう辻褄を合わせるのだろうと思っていたけど、読んでみると成程と納得させられる内容だった。違和感なくストーリーとしての整合性があり、史実も曲げない。お見事です。

この作品のおすすめポイントは、登場人物の心理描写。大奥というある種の牢獄に囚われた男たちはもちろん、将軍という重責を担いながらも母としてどうあるべきか、一人の女としての幸せとは何か。
将軍を支える重臣たちの思いや思惑も。

それぞれの時代に起きる困難をどう乗り越えて行くのか。そしてどのようにして赤面疱瘡という病を克服していくのかなど、ストーリー全体の流れがとても素晴らしい作品になっていると思う。

最後に。
この作品は男女問わずお勧めしたい。
時代小説は苦手という人も(実ははるばぁも苦手)文章だと分かりにくい描写も漫画だとすんなりと理解できたりするので、一度挑戦してみるのも有りだと思うよ。

はるばぁのひとりごと

感染症って怖いよね。昔あった黒死病って呼ばれたペストとかスペイン風邪とか。そう、昔の話しみたいに思ってたのに、パンデミックはいつ起こってもおかしくないことを、今回のコロナウイルスで実感させられたね。
今までの当たり前の生活が当たり前に出来なくなって。仕事も学校も、全く行けない日々が続いた人も多くいて。
はるばぁはあまり外出するほうじゃなかったけど、それでも不便さを感じたくらいだから、どんどん外に出たい人とか、人と関わるのが好きなタイプとかだと、想像できないくらい辛かったんじゃないかな。

人類はこれまでに何度もパンデミックにさらされ多くの犠牲を出しながら、それでもその度に克服して来た。

たくさんの人が病気の原因を探し、治療法を探し、治療薬を創る。どれも簡単な事ではなかったはずで、自身も未知のウイルスの脅威にさらされながらも感染者の治療にあたった医療従事者の人たち、ウイルスを研究しワクチンや治療薬を造った研究者の人たち、少しでも感染の拡大を阻止しようと外出制限に耐え続けた人たち。

大勢の人々が自分に出来る最大限の事をして頑張った結果が、パンデミックの収束に繋がっている。それはとってもすごいことだと思う。

確かに世の中には自分さえよければいいという考え方の人もいて、自分が感染している可能性が大いにあるにもかかわらず迷惑行為を繰り返したり。そんな悲しくなるような行動をする人もいるけど、自分とは何の関わりもない他人のために、世界中の多くの人が団結できるってことも、今回のパンデミックで知ることができたと思うんだよね。

見知らぬ誰かに。かかわったことのない誰かに。ほんの少しの優しさと配慮の気持ちを持ち続けたら、きっと戦争だって起こらないと思う。

いつの日かこの経験が、優しさの和の始まりになりますように…。