『不能犯』を読んでみた

こんにちは、はるばぁです。
漫画が好きで、気がつけば電子書籍の冊数が四桁を超えていて驚きました。
せっかくなので良かったもの、もそうでもなかったものも(笑)ご紹介していければと思います。

不能犯

原 作:宮月新
漫 画:神崎裕也
発 行:集英社
発刊数:1~12(完)

はるばぁの評価

人物作画 :★★★☆☆
背景作画 :★★★☆☆
ストーリー:★★★☆☆
おすすめ度:★★★☆☆

作品導入部

カフェでアイスティーを飲んでいる闇金業者の男木島。木島の前に座る男がテーブルの上の蟻にそのアイスティーをストローで一滴かけると、蟻がドロッと溶けて死ぬ。それを見た木島は、自分が毒を盛られたことに気付き、やがて死亡する。
その後の警察による検視の結果、死因は急激な血圧低下によるショック死だった。
木島の飲み物、遺体、現場からも死因に結びつく薬物等は一切検出されなかったのだ。
この報告を受けた夜目(やめ)というキャリア組の女性刑事は納得がいかず、現場の防犯カメラの映像に残っていた木島の前に座り黒い糸くず・・・・・にアイスティーをストローで一滴かけていた男を探し出す。

男の名前は宇相吹正(うそぶきただし)。公園のベンチで沢山の猫に囲まれて寝ているところに尋問を試みるが上手くはぐらかされ、猫に右手首を嚙まれてしまう。その手首の傷を宇相吹がべろりと舐めると傷が腫れあがった。
毒を盛られたと思った夜目(やめ)は署で検査を受けるが、手首に付着していた成分は唾液の成分のみ、猫に嚙まれた傷もごく浅く、アレルギー反応も見られないとのことだった。
その事実を受け入れられない夜目(やめ)は何日も署に泊まり込み、医学書を読み漁っていた。そんな彼女に同僚の河津村(かつむら)刑事が戦前とある国で行われた実験の話をする。
それは被験者に自身の首から下が見えない状態にし、人間は体の三分の一の血液を失うと死ぬと説明し、ナイフで傷を付けられ血が流れ続けているように思いこませ、やがてそろそろ三分の一の血液が抜けたころだと告げると被験者はショック状態となり、そのまま死亡したというもの。もちろん切り傷一つない完全な健康状態であったにもかかわらずだ。

思い込みで人は死ぬ。

法律上犯罪が実現する可能性が極端に低い状況における容疑者を、不能犯と呼ぶ。

思い込みで死ぬなんて信じられないと言う夜目(やめ)に、河津村(かつむら)は自身の息子がかつて彼女に冤罪で逮捕され自殺に追い込まれた件を例に挙げ、過去の夜目(やめ)の思い込みが真実よりも勝っていたと告げる。

過去の冤罪事件を引きずる夜目(やめ)は宇相吹に会いに行き、思い込みって何? と問う。
自分は無実の人間を犯人だと思い込んで自殺させた。自分は誰よりも理性的で頭のいい人間だと思っていた。自分だけは絶対に間違いなんて犯さない、正しい人間だと。

私はどうすればいいのかと問う夜目(やめ)に宇相吹は「塗り替えればいい。新しい思い込みで」と言い、体の関係を持つ。
事後、楽しかったお礼にと宇相吹は「今夜あなたは死ぬ」と告げる。
自分は何のために死ななければならないのかとの問いに、宇相吹は「証明するため。人間は弱いと」と答えた。

その夜入浴中、右腕の傷跡が人の顔のようになり『死ぬ。死ぬ死ぬ』と繰り返す。
人面のような傷を切り落とそうと剃刀を使うが、手首を切ってしまい血が溢れ出す。大量に血が流れ出す感覚に意識を失い、そのまま浴槽に沈み死亡する。

遺体となって発見された夜目(やめ)は自殺と判断された。理由はもし事故で手首を切ってしまったなら、出血が進む前にバスタブを出ればいいだけのことだからと。

後日宇相吹のもとに河津村(かつむら)がやって来る。
冤罪により息子を死に追いやった夜目(やめ)を葬ることを依頼したのは河津村(かつむら)だったのだ。
宇相吹の前で夜目(やめ)のことを悪し様に罵り、息子を殺された恨みを晴らしたと高らかに笑う河津村(かつむら)だったが、気付けばそこは宇相吹のいる公園ではなく刑事部屋の大勢の刑事たちの前だった…。

感想

サイコホラー。
絵に若干癖があるが、ストーリーの何とも言えない剣吞さにマッチしていてより(いい意味で)昏さを増していると思う。
宇相吹の能力(?)が催眠術のようにも思えるが、そんなものではない、もっと恐ろしい何かであると思わせるストーリー展開に、幽霊や妖怪といったものとはまた違った怖さを楽しめる作品だと思う。

オムニバス形式で一つ一つの物語があって、やがて一つになる。

宇相吹と対峙することになる刑事の存在、謎に包まれた宇相吹の正体など、ストーリーが進むにつれて明らかになっていく事柄に、つい続けて読みたくなってしまうので時間のある時に一気読みするのがお勧め。

怖さの中に人の生き方…誰かを貶めたいとか自分だけが特別でありたいとか、誰しもが持っていても不思議ではない感情がやがてこんな結末を迎えてしまうかもしれないという、ある種の戒めのような感覚を覚える作品でもあると思う。

最後に。
サイコホラーやサイコサスペンスなどが好きな人には是非お勧めしたい作品。
作品の性質上『死』が多く出てくるので、苦手な人は注意が必要かな。
完結していて一気読みできることと、12巻という短すぎず長すぎない丁度良さもおすすめポイント。
あまり万人向けの作品ではないのでお勧め度は星三つにしているが、サイコ系が好きな人にはハマる作品の一つだと思うので、是非読んでみて欲しい。

はるばぁのひとりごと

思い込みの激しい人っているよね?
ストーカーみたいな『自分たちは相思相愛だ』とか、そういう他人に迷惑かけるような種類の思い込みをする人。特別美人とかハンサムとかでもないのに、すごく自分が容姿に恵まれていると思い込んでいる人。周りの人から煙たがられているのに、自分は人気者だとか人望があるとか思い込んでる人。

はるばぁの周りにはそこまでの思い込みの激しい人はいないけど、もしそんな人がいたら対応に困るなぁと思う。

容姿の美醜はそれこそ好みとか流行りとか、明確な基準なんて無いから、自分が良いと思っているならそれでいいし、そのことで特に他人に迷惑をかける訳じゃないならむしろポジティブで良いと思うけど、たまに自分はコミュニケーション能力が高いから誰とでもすぐ仲良くなれると豪語する人がいるじゃない? あれには正直困る(汗) と言うのも、はるばぁは極度の人見知り。コミュ障を自覚してるレベルだから、初対面からグイグイ来られても怖いし緊張するし、上手く対応できないことで相手を不快にさせてないか不安になるし。
結果メチャクチャ疲れて『もうヤダ。人に会いたくない…』ってなって、人と関わらない→コミュニケーション能力が育たない→また疲れて嫌になる→人と関わらない…の負のスパイラルに。

幸いはるばぁはあまりいろんな人と関わらなくても問題ない生活スタイルなので、今のところコミュ障でも困ってないけど、自分はコミュニケーション能力が高いと思い込んでいる人ほど、どんな相手とでもコミュニケーションがとれるなんて過信せず相手の感情や性格も考えてほしい。

これはどんなことでもそうで、例えば頭が良いと思い込んでいる人は他人をバカにしがちだったり、どうせ教えても理解出来ないだろうと、自分の出した答えだけを押し付けたりする人が多いように思う。でもはるばぁが知ってる本当に頭がいいなと思う人は、自分は頭が良いとひけらかしたりしないし、他人を見下したりしないし、何かの答えを相手が自分の力で導き出せるように上手に誘導してくれる。

人より記憶力がちょっといいとか、学校で成績が良いとか、いい大学を出たとか。
それももちろん大切だし誇っていいことだとは思うけど、はるばぁが思う頭が良いひとはもっと多角的に物事を見れて、自分よりもっと上はいくらでもいるという謙虚さを持っている人。

はるばぁは既にアラフィフで、この先年齢を重ねるごとに記憶力も思考力も低下していって、今から頭の良い人になりたいと思ってもほぼ無理なことだと思う。でも謙虚であろう、人の気持ちに寄り添える人であろうとすることは出来ると思うんだよね。
それは年齢に関係なく、80歳になっても100歳になってもそうあろうと努力し続けられるもの。

はるばぁの目標は、側にいる誰かがホッとできるおばあちゃんになること。
何も話さなくても、ただ隣で座っていると肩の力を抜いてホッと出来ると思ってもらえる自分になりたい。
そうなるためにはまだまだ修行が必要だけどね(笑)

あ、でもその前に人見知りの壁が…(汗)